ベートーヴェン学術実践研究会

研究会開催日程のおしらせ

BAPS通信 2023年2月22日 Vol.3 第1回研究会報告

 2023年2月11日(土)に、予定通り、第1回BAPS研究会が開催され、会員8名が参加し、無事終了しました。

 最初に、会長より本研究会の概要の説明があり、その後、二名の副会長の紹介とあいさつが行われました。深井尚子会長は、ベートーヴェンという名称を冠した理由、また、学術的研究と演奏実践を境界線なく融合していくことを目的としているという趣旨の研究会設立の想いを語りました。

 その後、基調講演「音楽史上におけるベートーヴェンの位置」という題名で深井会長が、40分ほど講演を行いました。ベートーヴェンは、古典派とロマン派以降の音楽史の中間地点に位置し、ベートーヴェンが活躍した18世紀後半から19世紀前半は、音楽のみではなく、ヨーロッパ史、哲学史(思想史)、文化史にも大きな転換期であったことを資料を共有しながら解説しました。当時の神聖ローマ帝国の衰退、フランス革命による思想の大きな変化と共和制の萌芽、ドイツ観念論の台頭など、ヨーロッパ全体が大きく変わろうとしていた時期に活躍したベートーヴェンから、放射線状に視点を向けて、幅広く学びを深めていくことができるという要旨でした。この共有資料は、「会員限定資料」に掲載されていますので、ご覧ください。

 後半は、参加者による自由トークという形になりました。最初に副会長の二宮英美歌さんから、研究と実践の融合についてお話がありました。大学教員の立場から学生に指導する際の観点を2つの項目に分けて話されました。1つ目は、作曲家の本質に向き合うにはどうするか、2つ目は、演奏実践の際のメンタルの問題の解決法など、「音楽」に対してどのように向き合い、それを発展させていくのかについて熱く語っていただきました。次に、もう一人の副会長、大久保光哉さんからも、声楽家の観点から「言葉」の意味や意義について話され、次に、音楽は、作品、聴衆、演奏家の三つの要素からなるもので、その一つが欠けても成り立たないことを意識すること、この三つの観点の融合の重要性を話されました。
その後、参加者全員で第一回研究会の感想やこれからの方向性を話し合いました。やはり、多くの会員が、今のことに一生懸命で、音楽をさらに深く学ぶことができないことが多く、気になりつつ過ごしており、研究会という機会を利用して、学びを具体的に進めていきたいというお話が多く出されました。また、若い時の学びと経験を積んでからの学びは質が異なり、生涯、学ぶことには意義があるというお話もありました。

 本研究会のもっとも重要な目的は、会員の皆様とともに「音楽」を深めるだけではなく、悩みなども共有しながら、各々に役に立ち、研究と実践が融合できることです。第一回目の研究会において、発展が予感できるものでした。

(文責:深井尚子)