ベートーヴェン学術実践研究会

研究会開催日程のおしらせ

BAPS通信 2025年7月7日 Vol.17

BAPS会員のみなさま、2月の第5回例会からすでに5か月が過ぎ、すっかり夏本番になっていますね。みなさまお健やかにお過ごしのことと思います。BAPS通信Vol.17をお届けします。

 

先日6月21日、22日に、日本音楽表現学会の全国大会が、宮城教育大学で開催され、出席してまいりました。今回、私は発表はせず、2つの発表の司会を務めました。すでに23年続く学会で、たくさんの研究発表がありました。

今回の学会のテーマは「荒れ野のバラ」ということで、ゲーテの「野ばら」に夥しい数の作曲家が作曲していることに着目し、ソロ、合唱等、驚くほどたくさんの「野ばら」の演奏がありました。アルメニア語、ポーランド語も登場し、研究演奏と題したコンサートがありました。基調講演では、ゲーテの詩の音楽性というテーマで、東京大学総合研究所教授のヘルマン・ゴチェフスキ氏が登壇しました。内容より1つ、驚いたことがあります。なんと、現在、ドイツ国内の学校教育の現場では、ゲーテの野ばらの詩は、ジェンダーの視点から不適切で、一切、扱われていないのだそうです。女性蔑視の詩であるということでした。外国人である私たちにとっては、子どもがきれいなばらを取りたい思って手を伸ばすけれど、ばらは、とげで刺しますよ、と警告する、という内容であり、学校教育でも取り入れられています。しかし、ゴチェフスキ氏をはじめ、ドイツ人たちがドイツ語の持つニュアンス、また、表面的な単語の裏に隠された隠喩のようなことまでわかるため、不適切な詩、なんだそうです。

言葉の持つ意味は、母国語であれば、翻訳とは違った読み方もできるのは当然ですが、ゲーテの時代に許された概念は、今は、絶対にアウト、というお話が印象的でした。

 

 私が司会をした発表2つは、今やコンクールにまで名を冠するブルクミュラーのたくさんの版の研究や、1925年に来日した、ジル・マルシェックスというピアニストに関する研究など、普段、見聞きすることがない研究に接することができ、学会の面白さを感じました。

 

 学会は多岐にわたる研究テーマが、分科会で分けられますが、BAPSでは、今のところ、演奏実践や演奏解釈などの音楽へのアプローチが主流です。一般の音楽系学会とは異なり、身近なテーマで、みなさんが意見を出し合える小さな研究会ですが、その小規模の良さを感じられる研究家として継続していけたらと感じています。

 

 取り留めないお話でした。これからさらに暑い真夏に向かいます。どうぞ、みなさま、夏バテなどしないようお気をつけてお過ごしください。

 

10月18日のBAPS第6回例会には、たくさんのご参加をお待ちしています。

 

BAPS会長 深井尚子